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【ネタバレ無し・感想】伊坂幸太郎/短編小説「逆ソクラテス」大人にも子供にも読んでほしい一冊

 

逆ソクラテス (集英社文芸単行本)

逆ソクラテス (集英社文芸単行本)

 

伊坂幸太郎の小説なら、今まで何冊も読んできた。“すべて”と言い切れないのは、比較的新しい何冊かを読み逃しているからだ。

それでも、伊坂幸太郎の小説はいつも楽しみであり、何度も読み返すほど好きだ。

今日は、伊坂幸太郎の最新刊「逆ソクラテス」について書いていこうと思う。

 

<もくじ>

 

キャッチコピーとカバーデザイン

旦那につきあって近所の本屋へ行った時のこと、旦那に「何か買う?」と聞かれ、「いや、今月分のお小遣い結構使っちゃったし、今日は我慢しようかな」という会話をしつつ、ぶらぶらと新刊をチェックしていた。

 

すると、伊坂幸太郎の新刊「逆ソクラテス」が積んであるではないか。今しがた「今月はもう我慢しよう」と心に決めたばかりなのに。

 

しかも、キャッチコピーがずるい。

表には「敵は、先入観。世界をひっくり返せ!伊坂幸太郎史上、最高の読後感。デビュー20年目の真っ向勝負!」

裏には「逆境にもめげず、簡単ではない現実に立ち向かい、非日常的な出来事に巻き込まれながらも、アンハッピーな展開を乗り越え、僕たちは逆転する!」

 

どれもツボである。

帯を読んだだけで期待が高まり、伊坂の軽快なストーリー展開に、手に汗握るシリアスな場面、伏線を華麗に回収しながら着地するラストを思い描き、既に鳥肌が立つ。

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加えて、カバーデザインもずるい。

こちらも、ファンタジーな世界を描いたような色合いと絵でそのまま額に入れて飾ってもいいな、と思うくらいツボだった。

よく見るとそこに書かれている人物は全て小学生。この時点でストーリーはおろか登場人物もわかっていなかったが、「伊坂の小説×小学生」で果たして何が起こるのか。

 

こんなの面白くない訳がない。

「今月は我慢しよう」という決意は、キャッチコピーとカバーデザインを前にして早々に崩壊したのである。

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「答えのはっきりしないこと」に対するひとつの答え

読み終わって「やっぱり面白かった」と思った。各ストーリーで先入観がひっくり返っていく様は爽快で、今まで経験した納得のできない物事や人にギャフンと言わせた気分だった。

 

現実の世界では、このように特定の悪者を倒して「一件落着、めでたしめでたし」ということはほとんどなく、割り切れないことや完全に解決できないことが多々ある。

3話目『非オプティマス』に登場する久保先生の言うところの「答えのはっきりしないこと」である。

 

今作には「答えのはっきりしないこと」の事例が多く提示されている。そして、物語の中でも現実の私たちと同じように、どのキャラクターもはっきりした答えは出せないでいる。

しかし、正解が出せないながらも、この小説ではひとつの成功例を生み出していて、読み終わったときには優しい気持ちになった。

現実世界の私たちは、この先も答えのはっきりしないモノたちと生きていくのだろうけれど、誰かを批判したり攻撃したりすることは最善ではないということはわかる。その先には、もしかしたら、今作のような爽やかな結末もあるのかもしれないと思えた。

 

読みやすい一冊

今回の小説は、伊坂の小説の中でも特に読み進めやすい内容だと感じた。

まず、短編小説でこまめに話が完結し、とっつきやすいことも挙げられる。更に、小学生の話が中心であるため、おそらく誰でも一度は経験があるであろうシチュエーションが数多く出てくるからだ。

 

私の旦那は小説が苦手だ。参考書などの難しい本はたくさん読むのだが、どうやら物語を読むのが苦手らしい。「絵が無いと無理」と言っていたから、おそらくイメージできないのだろう。

確かに自分が経験したことのないものを想像するのは難しい。しかし、世紀末の世界でも宇宙の話でもなく、超人的な能力を持つ主人公が聞いたことのない技で戦うような場面もない。誰もが経験した小学生時代がベースだ。小説に馴染みのない人でも、読みやすいのではないだろうか。

 

「分厚い本は苦手」「伊坂幸太郎の小説は読んだことがない」という方にもお勧めだし、子供の読書感想文の題材にしてもいいくらいだと思っている。

また、伊坂の短編は独立したストーリーに関わらす、一冊を通して登場人物やストーリーがゆるく交差する。そのため、すべて読みえたときにつながる爽快感も醍醐味だ。

大人も子供も是非読んでみてほしい一冊である。

 

逆ソクラテス (集英社文芸単行本)

逆ソクラテス (集英社文芸単行本)